最高裁判所第二小法廷 昭和46年(行ツ)29号 判決
東京都江戸川区中央一丁目一一番一六号
上告人
米山松五郎
右訴訟代理人弁護士
中条政好
同区中央四丁目二〇番一七号
右補助参加人
米山ひさ
同区平井一丁目一六番一一号
被上告人
江戸川税務署長
河野勝
右当事者間の東京高等裁判所昭和四五年(行コ)第二九号昭和三六年分贈与税無効確認請求事件について、同裁判所が昭和四六年一月二九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中条政好の上告理由第一点について。
所論の点に関する原判決の判断は正当である。論旨は関係法条を正解せざるに出たもので、採用のかぎりでない。
同第二点について。
原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ)が最高裁昭和三九年一〇月二二日第一小法廷判決・民集一八巻八号一七六二頁を引用して所論の申告が無効でないとした判断は正当で、その過程にも所論の違法はない。論旨は採用できない。
同第三点について。
所論の点に関する原判決の判断は正当で、論旨は採用できない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 村上朝一 裁判官 色川幸太郎 裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄)
(昭和四六年(行ツ)第二九号 上告人 米山松五郎)
上告代理人中条政好の上告理由
第一点
一、上告人は控訴審即ち昭和四五年(行コ)第二九号事件において二個の追加的請求を行つている。処がいずれも不適法であるとして却下されている。
処で「お知らせ」処分の取消請求についての却下理由は出訴期間を経過している違法であるというのであるが、現行行政事件訴訟法第九条括コ内参照「処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者は取消訴訟の提起が出来る」と規定されている。
上告人は、当該請求はこの九条によつたものであり原審は結局この行政事件訴訟法第九条の存在を看過して裁判をしたものである。
若しそうでないとすれば、同条の解釈及びその適法を誤つたという違法があり、しかも判決の勝敗にも影響がある。
二、何となれば上告人は当該贈与税の申告に関しては期限後申告者である。しかし旧相続税法第三〇条の特則によつて同法第二八条による申告者として或は看做されて同法(旧)第三二条第一項の規定により更正請求をすることができる適格者である。
即ち上告人は当時(昭和三七年二月一日より末日)同法第二八条により贈与税申告の義務があつた者であり且同法第三六条により無申告決定通知前の昭和三八年二月五日(甲一)申告をしているからである。
なお上告人から更正請求を受けた(昭和三八年三月四日申立)被上告人は旧法第三二条第一項の規定により請求を拒むときは、同法第三五条第一項の規定により更正決定をなし通知すべきであつたことは、同法(旧)第三五条第一項(期限後申告書の提出があつた場合云々)の規定により明らかである。
「お知らせ」処分を以つて右更正決定に替えることは出来ない。してみると訴訟の継続中は何時でもこの取消を求めることは可能であると言わざるを得ない。
第二点
一、原判決摘示の(二)において右申告は無効でないと結論を判示しているが、それは上告人が母ひさから家屋を貰い、それに伴つて借地権も貰つてこそ而してそれが上告人の利得となり財産の増加となつてこそ申告し納税義務が生ずるのである。然るに上告人は家屋を母ひさに戻している。従つて借地権も母に戻つたというべきである。
之は要するに贈与税賦課の対象はすでになくなつている。それにもかゝわらずどうしてその申告が無効でないというのか上告人には理解できない。
而してこの判断は判決にも影響があり、また行政事件訴訟法第三〇条の濫用があつた場合にも該当する。従つて当然その判断には理由を附すべきである(民訴第三九五条)。然るにその理由が附されていない点がある。
第三点
一、二審共賦課処分及び滞納処分又は執行処分は別個に独立の処分であつて、滞納処分は賦課処分の瑕疵を承継しないと判示するが、かゝる説は許容されるものではない。
以上